自由な働き方を求めて、フィリピンでの就職を考える日本人が年々増えてきている。フィリピンの公用語のひとつは英語なので、フィリピンで働きながら英語力をアップさせたい人も多いようだ。美しい自然と親切で明るいフィリピン人に魅了され、永住を目指す人も少なくない。

この記事では、フィリピンで働きたい人に向けた情報を詳しくまとめた。

フィリピンの仕事事情

(HowTravel編集部)

●現在の求人マーケット事情

外務省が発表している「海外在留邦人数調査統計」によると、2017年10月1日時点でフィリピンに進出している日系企業の数は1,502社であり、これは世界で8番目に多い。日本人の給与はフィリピン人よりも高いため、現地の企業に採用されるケースは少ないことを考えると、日系企業に勤めるか、駐在員として派遣されることがフィリピンで働く一番の近道と言えるだろう。

しかしながら、フィリピンの求人の数は多く、また多種多様であり、日本人ならではの能力、例えば日本語力やホスピタリティの高さなどを求めている企業も少なくない。仕事探しは他国と比べるとそこまで難しくないので、根気強く就職活動を続ければ、必ず理想の職場を見つけることができるだろう。

また、国際労働機関(ILO)によると、フィリピンにおける女性管理職の割合は47.6%(世界第4位、日本は11.1%で世界第96位)と非常に高く、女性も安心して働ける環境であることがわかる。

●給与や労働時間等の条件

①給与
フィリピン人の新卒の給与は10,000~20,000ペソ(約21,000〜42,000円)ほど。日本人がこの給与で働くことはないが、フィリピン人を雇えばこれだけの給与で済む、ということは覚えておいたほうがいいだろう。現地企業の求人が日系企業に比べて少ないのはこのためであり、日本人が採用される場合は給与相応の活躍を期待されている。

現地企業で働く場合、日本人の給与は未経験者であれば50,000ペソ(約106,000円)、経験者かつマネージャー職に就くと100,000ペソ(約212,000円)くらいのからスタートするのが相場。営業職やマネージャー職は比較的高く、事務職やカスタマーサポートは比較的低い。給与は月に2回分けて支給される。

なお、フィリピンは累進課税で、年収2,000,000ペソ(約427万円)を超えると32%、年収8,000,000ペソ(約1,700万円)を超えると35%引かれる。日本人の場合、ほとんどの人が32%以上引かれることになるので、給与額を提示される際には、額面の給与なのか手取りの給与なのかをきちんと確認しよう。通勤手当や住宅手当の支給も会社によって異なるので、こちらも要確認。ボーナスは年に1度、クリスマスの時期に支給される。

②勤務形態
仕事によるが、8時〜17時、9時〜18時の1日8時間労働が基本。土日祝は休みで、残業は基本的にない。有給は10日支給される。

フィリピンの祝日には固定されているものとされていないものがあり、当然予定に無かった祝日が増えたり、予定されていた祝日が無くなったりする。2019年の祝日は現時点で19日の予定。振替休日については大統領に権限がある。最も長い休暇はクリスマスで、クリスマスの前後1週間ほどが休暇となる。国民の9割以上がキリスト教徒であるフィリピンでは、クリスマスが最も重要な行事なのである。

③福利厚生
フィリピンには、日本では馴染みのない福利厚生がいくつかある。例えば米の現物支給や、衣類代、医薬品代の補助など。中でもユニークなのが、朝食と昼食を無料で提供する制度。これは、時間にルーズなフィリピン人を遅刻させないためのもので、就業開始時間に間に合っていれば、誰でも朝食と昼食を無料で食べることができる。

フィリピンで仕事をするうえで必要な能力

英語力

●語学力

フィリピンの公用語はフィリピン語と英語である。ほとんどのフィリピン人は英語が話せるので、ビジネスの場では英語が使われることが多い。フィリピン人の英語は多少訛っているが、日本人でも聞き取りやすい。日本語学校や日本人向けのツアー会社など、日本語しか話せなくても就職できる仕事もあるが、英語を話せたほうが選択肢が増えるし、給与も良くなる。

例えば「IELTSのスコア6.5以上」というように、英語力に関して明確な基準を設けている求人はほぼないが、日常会話レベルの英語は身につけておくといいだろう。もちろん、職種によっては高い英語力を求められることもある。日本人の給与は総じてフィリピン人より高いので、現地の企業が日本人を採用する場合、英語力だけでなく日本語力を求めているケースも多い。ここで言う日本語力とは、英語をより正しい日本語に訳す能力や、反対に日本語を正しい英語に訳す能力のことなので、日本人であれば誰でもいい、というわけではない。

また、ビジネスの場においてはフィリピン語が話せなくても問題がないケースが大半だが、フィリピン人とより親密なコミュニケーションを取るためにはフィリピン語もある程度できるようになっておくと良いだろう。フィリピン人には陽気な人が多く、仕事中もプライベートなおしゃべりをすることが多い。

●学歴

履歴書を書く際や就労ビザを申請する際に必要になるが、内容はあまり重視されない。ただし、フィリピンは日本以上の学歴社会なので、最低でも高校は卒業しておくといいだろう。特別に優れた学歴を持つ場合はもちろんアドバンテージになるので、その場合は面接でもしっかりアピールすること。

●職歴

即戦力が求められることが多いが、求人情報の中には未経験者歓迎と書かれているものもある。日本での社会経験は大いに評価されるので、経験や身につけたスキルについて、文章でも言葉でもきちんと説明できるようにしておこう。現地企業での採用を望むなら、職歴は特に重要となる。高い給与を支払ってでも雇いたいと思ってもらえる人材でなければ、書類が通ることも難しい。

フィリピンでの仕事の見つけ方


仕事探し

●仕事の探し方

①現地の就職エージェントを使う
マニラの就職エージェント
Sagass
 
②日本人向けの情報サイトを使う
Primer
Job Pot

③求人サイトを使う
J-K Network
Reeracoen Philippines
フィリピン求人情報

④人脈を使う
フィリピンではコネクションも重要になる。また、友人や知人により親切な傾向にあるので、フィリピン人の知り合いや、フィリピンで働く日本人の知り合いがいる場合は、自分が仕事を探していることを伝えておこう。

⑤駐在員になる
ただでさえ、日本人の給与が良いフィリピン。駐在員の給与は更に良く、平均の2倍ほどにもなる。駐在員になれば日本では考えられないような贅沢な暮らしができるので、駐在員としてフィリピンに派遣されることを目標にするのも良いだろう。ただし、フィリピンに支社を持つ会社に勤めたからといって必ずしも駐在員になれるわけではないことや、滞在年数の決定権は会社にあることは頭に入れておきたい。

⑥転職エージェントに相談する
現地の求人サイトや、現地在住日本人向けの情報サイトで求人情報を探すことで、理想とする就職先が見つかる可能性は大いにある。しかし、それらの求人情報は自国民、またはすでに永住権や就労ビザを取得している人が対象である場合が多く、まだビザを取得していない人や、フィリピンでの就職活動の知識が乏しい人には難易度が高いケースがほとんどだ。

そこでおすすめしたいのが、転職エージェントに相談するという方法だ。経歴やスキル、希望の条件や将来の展望に合った求人情報を提供してくれるだけでなく、経験豊富なエージェントであれば、履歴書の添削から面接対策を行ってくれるだけでなく、ビザの取得までサポートしてくれることもある。

以下の記事で、海外案件に強いお勧めの転職エージェントを紹介しているので、ぜひ参考にして欲しい。

●日本人が働きやすい職種

日系企業以外であれば、現地企業の営業職やコールセンター、オンライン英会話スクールのカスタマーサポートなどは、英語力の他に日本語力を求められるケースがあり、日本人が比較的採用されやすいこともある。地域としては、マニラ、セブ、ダバオなどが人気。

●希望の仕事が見つかったら(面接や給与交渉)

履歴書は、英語と日本語のもの、どちらも準備しておくと良い。そうしておけば、現地企業と日系企業、どちらの企業にも応募できるからだ。現地企業に日本語の履歴書は必要ないが、日系企業は英語と日本語、両方の履歴書を求めてくることがある。しつこいようだが、日本人の給与は高いので、現地企業への採用はなかなかハードルが高い。現地企業に固執せず、様々な企業を検討してみよう。

英語の履歴書にはフォーマットがないので、採用担当者が魅力的に思う内容にすることを心がけよう。A4サイズ、両面印刷で1、2枚程度、手書きではなくPCで作成するのが一般的。

また、カバーレターを用意することも忘れないように。基本的に、カバーレターには志望動機や自己アピールを書き、履歴書には職歴や学歴、スキルなどを書く。採用担当者が最初に目を通すのはカバーレターなので、カバーレターは特にキャッチーにすること。嘘を書いてはいけないが、少し大げさだと思うくらいにアピールするのが良い。

スペルミスはご法度なので、必ず第三者にチェックしてもらおう。履歴書、カバーレターは何枚も書くことになるので、インターネットなどでお手本を探しながら、よりよい内容にブラッシュアップしていこう。

面接では、明るく笑顔を絶やさないこと。フィリピン人は明るく元気で、陽気な人が多い。また、職場では上司も部下も関係なくフランクに接する。リラックスして、自分の魅力を最大限にアピールしよう。フィリピンの面接は1、2回ほどで終わることが多く、書類が通ってから1週間以内に結果が出るケースが多い。

なお、フィリピンでは、採用されるとまず6ヶ月間の試用期間が設けられる。この間に結果が残せないとリストラされてしまうので、試用期間が終わるまでは特に気が抜けない。中には、給与が安く済む試用期間だけ雇ってリストラすることを前提としている会社もある。そのような会社を選んでしまわないように、仕事先は慎重に選ぼう。

給与額の決定の際にも同じことが言える。提示してきた金額と実際の金額が違う、ということも十分にありえるので、雇用契約書の確認はしっかりと行うこと。日本人の給与は高く、32%もの所得税が引かれることがほとんどなので、提示された給与が額面なのか手取りなのかも確認しておかないと、想像していた給与よりも低くて生活に困ってしまう、という事態もあり得る。

アジア

就労ビザについて

●就労ビザの種類

フィリピンで最も一般的な就労ビザはPre-Arranged Employment Visa、通称9Gと呼ばれるビザである。Pre-Arranged Employmentは直訳すると「手配済みの雇用」。この名前からも分かる通り、9Gビザを取得するにはフィリピンでの仕事先を見つけておく必要がある。大半の駐在員もこのビザを申請することになる。

9Gビザを取得するのは、他国の就労ビザに比べるとあまり難しくない。ビザの取得をサポートしてくれる会社さえ見つかれば、年齢や学歴などはさほど重要視されないからだ。なお、フィリピンで就労するためにはAEP(Alien Employment Permit)と呼ばれる外国人雇用許可証も必要になる。AEPは9Gビザを申請するより前に取得しなければいけないので注意すること。6ヶ月未満の就労の場合はAEPではなくSWP(Special Work Permit)と呼ばれる許可証が必要になる。

また、ACR I−cardとTINの取得も忘れないようにしよう。ACR I−cardの正式名称はAlien Certificate of Registration Identity Cardと言い、フィリピン移民局がフィリピンに60日以上滞在する外国人に発行を義務付けている外国人登録証のことである。ACR I−cardは9Gビザと一緒に申請することができる。TINの正式名称はTax Identification Numberで、納税者番号のことである。TINはオンラインで申請すると即日発行される。費用は無料。TINの申請ページはこちら

●就労ビザの取得方法

<AEPの取得方法>
①まずはフィリピン労働雇用省(以下DOLE/Department of Labor and Employment)に必要な書類をファイルにまとめて提出する。手数料は有効期限が1年の場合は9,000ペソ(約19,000円)で、1年追加されるごとに4,000ペソ(約8,500円)かかる。

基本的に雇用期間と同じ年数のAEPを取得することになる。最長は5年。ただし例外もあるので、雇用先とよく確認すること。申請に必要な書類のほとんどは会社が用意するものだが、自分で用意しなければならないものもある。主な申請書類は以下の通り。

・申請書
・雇用契約書
・雇用主の営業許可書
・申請者の顔写真(2cm × 2cmを2枚)
・申請者のパスポートのコピー(顔写真のページ1枚、最新の滞在許可のスタンプが押してあるページ1枚)
・英文の履歴書(申請者を知る3人のフィリピン人の名前と連絡先を記載する必要がある)
など

②書類が通ったら、DOLEにて会社の上司と面接を受けることになる。英語での面接となるので、不安な場合は事前に練習しておくといいだろう。質問される内容は、「なぜフィリピンで働きたいのか」、「具体的にどのような仕事をするのか」など、フィリピンで就労する目的やその内容についてがほとんどである。

フィリピンに利益をもたらす人材なのかどうかを確認するための面接だが、ここで落とされることはほとんどないので落ち着いて受け答えしよう。なお、この面接は初回の申請時に行われることが多く、更新をする際にはやらないこともある。

③面接が終わってから即日、または翌日以降にDOLEでAEPを受け取ることができる。

<9Gの取得方法>
①まずはフィリピン入国管理局(以下BI/Bureau of Immigration)に必要な書類をファイルにまとめて提出する。申請手数料を支払ったら必ずオフィシャルレシート(領収書のこと。通称OR。フィリピンには2種類の領収書がある)を受領し、提出すること。条件によって異なるが、申請手数料は10,130ペソ(約21,600円)ほど。詳しくはこちら

申請に必要な書類には会社が用意するものと申請者が用意するものとがあるので、会社側と一緒によく確認しよう。主な申請書類は以下の通り。

・申請書
・雇用契約書
・雇用主の会社登記簿
・雇用主の定款
・雇用主の所得税申告書
・雇用主の納税証明書
・申請者のパスポートのコピー(顔写真のページ1枚、最新の滞在許可のスタンプが押してあるページ1枚)
・英文の履歴書(申請者を知る3人のフィリピン人の名前と連絡先を記載する必要がある)
・申請者がTINを保有していることを証明する書類
・申請者のAEPのコピー
・申請者の顔写真(2cm × 2cmを2枚)
など

②書類が通ったら、BIにて会社の上司と共に面接を受ける。英語での面接となり、フィリピンで働く理由や、その仕事内容について質問される。フィリピン人ではなく外国人であるあなたを雇う必要性を証明するための面接であることを意識しよう。

③続いて、ACR I−cardに必要な書類を提出する。写真撮影と指紋の採取がある。

④9Gビザのスタンプを押してもらうために、パスポートの原本を提出する。

⑤全ての行程を終えると、9GビザとACR I−Cardが発行される。AEPと違い、発行されるまでには最低でも2〜3ヶ月、混雑時だと6ヶ月ほどかかることもあるのでスケジュール管理は慎重に。

なお、9Gビザが発行されるまでの間に、仮労働許可証となるPWP(Provisional Work Permit)を申請しなければならないので注意。PWPもBIで申請を行うことになる。9Gビザのスタンプがパスポートに押されるまで、3ヶ月単位で申請し続ける必要がある。

申請手数料は4,040ペソ(約8,600円)。また、就労ビザの申請中は観光ビザの取得と更新も忘れないこと。申請中に観光ビザが切れてしまった場合、罰金を支払うことになる。申請手数料についてはこちら

※申請書類や申請手数料は頻繁に変更されるので、正しい情報は申請をする前に必ず各窓口で確認すること。

フィリピンでの暮らし

フィリピンの観光馬車カレッサ
家賃や物価は日本に比べて総じて安い。例えば、ジムやプールがついた高級なコンドミニアム(日本で言うマンションのようなもの)にも、日本円にして月35,000〜50,000円ほどで済むことができる。もちろん、より一般的な住居に住めば、更に家賃を抑えることができる。

タクシー代も安く、例えばセブ島の初乗り料金は40ペソ(約85円)である。自炊することを心がければ、たまに外食をしても、月の食費は15,000円もあれば足りるだろう。その他、光熱費や日用品費、娯楽費に30,000円ほどかかると考えても、月に10万円ほどあればじゅうぶんに暮らしていける。経験とともに給与がアップすれば、貯金をすることも可能だろう。

フィリピンで働くことに興味があるのであれば、まずどのような案件があるかを確認しよう

ここまでフィリピンでの仕事の見つけ方について説明してきたが、希望通りにフィリピンで働くことができるかどうかは、結局のところ求人案件次第である。フィリピンで働くことに少しでも興味があるのなら、ひとまず海外の求人案件に強い転職エージェントに登録して、自分の経歴や志向に合わせた案件を紹介してもらおう。エリアや職種、給与水準がある程度分かるようになれば、いっそう具体的にフィリピンでの働き方や実際の生活がイメージできるはずだ。

以下の記事で、海外案件に強いおすすめの転職エージェントを紹介しているので参考にして欲しい。

その他の国の働き方