日本では保育園に入れないという家庭が続出しており、わが子が保育園に入れなかった思いを書き綴った「保育園落ちた日本死ね」というタイトルのブログは昨年日本で大きな注目を集めた。

また、近年は教育熱の高まりから、幼稚園から受験という家庭も増えており、幼少期から狭き枠の取り合いという現象が発生している。

海外でも同様の現象は起こっているのだろうか。海外における保育園・幼稚園事情を海外現地在住ライターがリポートする。

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目次

【アメリカ】「保育料高すぎアメリカ死ね」状態な保育園事情

(現地在住ライター 長谷川サツキ

アメリカの育休は短い。産後12週間以上休めばクビになっても文句が言えない上、日本のような有償の育休制度がないので育休中の収入はゼロ。そのためアメリカの母親は出産したら早々に子供を預けて仕事に復帰する人がほとんどだ。

そんな親たちに対応するべく、アメリカには保育園も幼稚園も数多くある。お受験や順番待ちの園がある一方で、不人気の園は次々に消えていく。そのため園はほかの場所との差別化を図ろうと、アート系、勉強系、宗教系、モンテッソーリなどなど様々な趣向を凝らす。

新生児から預かってくれるデイケアには認可・無認可といった区別はなく、空きがあれば誰でも好きな園に入ることができる。2歳頃から入園可能なプリスクールは日本の幼稚園に近く、時間が短い分費用も安い。どちらも園によって人気・不人気はあるが、日本のように受け入れ先がないという心配はまずない。その点は日本よりも恵まれているかもしれない。

問題は費用だ。都市部のデイケアなら「最低月12万円から」は決して珍しくなく、働くとかえって赤字になると仕事を断念して家庭に入る人も少なくない。年の近い子供が複数いればなおのことだろう。日本とはまた違った問題のあるアメリカ。「保育料高すぎアメリカ死ね」と言いたい人も多いに違いない。

【フランス】乳児の託児所は激混みだが、ベビーシッターが大活躍

(現地在住ライター 竹内真里

子どもの数に対して託児所が十分でないのはパリやその他の大都市も同じだ。ただこちらでは複数の預け先がある。

公立の託児所は2ヶ月半〜3歳の子が終日または半日過ごすタイプと、原則として週に2日、数時間のみ預けられるタイプがある。もちろん席に限りがあるので妊娠がわかったら早めに役所の担当の課に登録申し込みに行き、料金は世帯の所得に応じて決められる。希望の公立の託児所に入れなかった場合、利用料金が割高になるが民間業者や非営利団体による託児所もある。

他の選択肢としてベビーシッターがある。公的に認定されている有資格ベビーシッターには2種類あり、雇用関係が異なる。1つは各自治体がベビーシッターの雇用主。もう1つは子どもの親が直接雇用主となり契約を結ぶタイプだ。直接雇用の場合、地域差はあるものの2015〜16年の平均時給は8,65ユーロ(手取り)。パリの公園を訪れたら、遊具エリアで子どもたちを遊ばせつつお喋りに興じる彼女らの姿を目にするだろう。

3歳になるとたいていの子が幼稚園に行き始める。公立の幼稚園に席がなくて入れなかったという話は筆者の周囲では今のところ聞いたことがない。有料で宗教色のある私立では書類審査、面談の結果によって合否が決まる。家庭によっては最初から私立に通う子、途中から私立に転園する子もいる。いずれもお迎えの時間には親、祖父母、ベテランシッター、アルバイトの大学生など顔ぶれもさまざまだ。

こうしてみると預け先としてベビーシッターの存在が確立している点が日本との大きな違いだ。産後わりとすぐに職場復帰する女性が多いので、人の手を借りなければやっていけないのは当然だろう。ベビーシッターに給与を支払う負担はあるものの、役所から手当てが出るのでバランスがとれるのかもしれない。

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【イギリス】公立の幼稚園は狭き門

(現地在住ライター バックリー佳菜子

筆者が住むイギリスでは幼稚園・保育園はナーサリー(Nursery)と呼ばれ小学校に上がる前の4歳児までが対象であるが、日本と同様公立のナーサリーと私立のナーサリーがある。

公立のナーサリーは日本の公立保育園と同様に入園には家庭の収入などの審査がある。福祉が手厚いことでも有名なイギリスでは公立のナーサリーに入れる優先順位が難民や失業保険を受けている家庭、シングルマザーの家庭などが高く、両親の片方であってもフルタイムで勤務しているような家庭ではなかなか入園できない問題がある。

筆者のような共働き世帯では自然と私立のナーサリーに入れるしかなく、各園によって費用は様々であるが、筆者の子供が通う園ではフルタイムで通うと月に25万円ほど保育費がかかるためパートタイムで通わせている家庭が多い。