海外に留学する際や長期出張する際、または移住する際に最も気になるがお金のことだ。当然ながら世界には日本よりも物価が高い国も、低い国も存在する。インターネット上で検索すると、「東南アジアでは一食100円」や、「税率が高い北欧ではビール一杯800円」というような情報が蔓延しているが、旅行時ならまだしも、日本人の現地在住者がそのような水準で生活しているわけでもなく、参考にならない情報も多い。この記事では、海外でも最も日本人が多く移住しているアメリカの現地在住者に、生活費・物価の実際のところを聞いてみた。特に今回はアメリカの田舎ではなく、大都市シアトル近郊であるため、アメリカ都市部に移住する人は参考にして欲しい。

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目次

シアトル郊外夫と二人暮らしの生活費

(現地在住ライター ミナミ・ヒューズ

  

項目 支出額 コメント
家賃 150,000円 家は小さな2LDKで庭とガレージ付き。
食費 40,000円 外食は量が多いためか、日本に比べ高い。チップも払う必要あり。
光熱費 17,000円 電気代とごみ収集代が2か月に1回。ごみ代は借家の場合は家賃に含まれることが多い。
交通費 35,000円 車社会なのでガス代が基本。車2台分。
その他 110,000円 健康保険、車両保険、生命保険、携帯代、インターネット、生活用品、小遣い等。
合計 352,000円


生活費の合計を見ると信じられないかもしれないが、うちの家計はこれでもかなり節約して暮らしている。食事はなるべく家で作るようにし、外食は月に数回だし、これといって無駄使いもない。日本なら小さい子供が居ても貯金しつつそれなりに暮らしていける金額のように思えるが、ここシアトルではなかなか厳しい。

私にはアメリカの都市部の生活費は日本に比べ各段に高いように感じる。少なくとも自営業の人はそうだろう。その理由の一つは保険料だ。オバマケアの施行で少し改善されたとはいえ、アメリカの健康保険の高さは異常だ。うちは毎月夫婦で5万円以上持っていかれるので家計への打撃は大きい。

また、シアトルではここ数年バブルとも言えるような不動産の高騰により、家賃がものすごい勢いで上がっている。去年まで4000万円だった家が今年は7000万円の値がついた、なんて話もよく耳にするこの頃だ。私と夫もその煽りを受け、数年前までシアトル市内で10万円ほどの家賃の家に住んでいたが、現在は郊外に引っ越したにもかかわらず、15万円と50%も上がってしまった。とはいえ留学生や単身者の場合は、シェアハウスに住んでバス通学、保険は日本で入ってくるなどすれば、一人月10万円以下でも最低限生活は可能だろう。

カリフォルニア州ロサンゼルス近郊での夫婦二人の生活費

(現地在住ライター 長谷川サツキ

  

項目 支出額 コメント
家賃 140,000円 2LDKのバルコニー付き。大学関係者のみ入居可能な学内アパート。
食費 45,000円 主に自炊。チップが高いので外食はあまりしない。
光熱費 4,000円 ガスなし、電気のみ。節電プログラムに加入して電気代を節約。
交通費 25,000円 車は1台。職場は車で片道15分と近い。
その他 70,000円 携帯電話、日用品、被服、交際、車両保険等。
合計 284,000円


ロサンゼルスから車で1時間ほどの都市アーバインは、過去に何度も「全米で最も安全な町」という称号を手にした人気の町だ。そのためリタイアした富裕層に人気が高く、住宅費は高騰し続けている。学内アパートでありながら2LDKで14万円という値段は一見高く見えるが、同レベルの部屋を学外で借りると20万円は下らない。通常であれば電気・水道・ゴミ回収で1万円強、インターネットとケーブルテレビでさらに1万円強かかるが、我が家は電気代以外は大学が負担してくれるので助かっている。食費については自炊がメイン。スーパーの種類が多いので工夫すれば出費を抑えられる。ただし何かとイベントが多いアメリカでは交際費が高くつく。外食すればチップも支払わなければならない。20%ものチップはなかなかの痛手だ。

カリフォルニア州のガソリン代はハワイに次いで2番目に高い。そのため「車がないと生きていけない」と言われるカリフォルニアでありながら、ガソリン代が高騰する時期には維持費が支払えずに車を手放す人が増える。我が家の場合は夫婦ともに職場が近く、日々の用事もほとんど近辺で足りるのでこの金額でなんとか収まっている。

他の州と比べ、カリフォルニアで必要な生活費は高額だ。住宅費も「そろそろピークだろう」と毎年のように言われながら上がり続けている。そのため今年2016年3月、生活費高騰への経済政策として、2022年までに最低賃金を時給1,700円まで引き上げることが決定している。

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コロラド州で家族四人暮らしの生活費

(現地在住ライター MEEK まゆ

  

項目 支出額 コメント
家賃 90,000円 今のところの家のローン。利率が変化するので変わる可能性あり。
食費 30,000円 生鮮食品が日本よりも安い。魚は冷凍しか買えない、内陸部の田舎なので。
光熱費 18,000円 こちらは日本と変わりない。
交通費 45,000円 今は旦那の通勤が往復4時間なのでガソリン代の支出が高い。
その他 10,000円 交友費等。
合計 193,000円


大人二人、小学校高学年、四歳児の四人家族。アメリカ国内では筆者家族の生活レベルは中の下だろう。日本にいた時より電車に乗らないので電車代はないが項目別生活費の通り、今は旦那の通勤が往復4時間でガソリン代が上がりつつあるのが痛手だ。それに加え半年毎にやってくる車の保険の更新。車2台所有なのでこれで年に二回は大打撃を受ける。駐車場代はないが、車のメンテナンス、タイヤの交換、車社会はお金がかかる。それでも大人一人一台持っていないと不便でしょうがない。スクールバスに乗せる家庭もある。ちなみにスクールバスは無料だ。スクールバスを使わないとなると、子供を学校、スポーツに連れていく足代(ガソリン)もかかる。これは日本では歩いて自分一人で学校に行っていた私とは大違いだ。

光熱費はあまり日本と変わりないが、冬の暖房代は日本より高い。家が大きく、暖めなくてはいけない面積が増えるからだ。

そして何より日本と違うのは医療費だ。オバマケアが始まったが中の下のレベルのうちにはなんの影響もない。オバマケアは低所得者に対して保険料の免責を行っているが、その条件は非常に厳しい。そもそも保険のカバー率が日本に比べて狭い。1回風邪をこじらせて医者にかかろうものなら1万円は確実に飛ぶ。子供二人ともかかれば症状、受ける検査によりその月は薬代も含め確実に2万5千円は飛ぶ。食費は恐らく日本よりは抑えられるが医療費は倍以上かかっている。

最後に、うちの家族が食費を抑えられているのは日本のように美味しいものがたくさん売っていないからだ。日本に里帰りすれば、いろいろ食べてお金もかかるが、ここは選択肢が少ない。都会に出て日本食系スーパーで買い物してもお煎餅が湿気ていたりしてあまり美味しくないのでそれなら我慢となる。