東日本大震災で福島第一原子力発電所事故が発生して以降5年が経過した今でも、日本では原発再稼働を巡る議論が冷めやらない。直近でも東京都知事選に出馬した鳥越俊太郎氏は原発撤廃を旗印に掲げていた。原発撤廃の議論は国内にとどまらず、ドイツでは日本の原発事故以降、国内全ての原発を2020年までに閉鎖することを決定している。一方で、原発を新たに建設する国も後を絶たず、国によって対応はまちまちだ。国内での報道のされ方や、現地民の反応について、日本と同じく原発事故を経験したロシアと、お隣韓国の現地在住ライターがリポートする。

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目次

【ロシア】一般的に原子力発電はロシアにとってなくてはならないものとされている

(現地在住ライター チェルカーソワ・ユーリヤ

ロシアには現在、10か所の原子力発電所があり、閉鎖される計画はない。むしろ、今後増える可能性もある。ロシアの電子力発電の技術は最新なものであり、それを扱う能力、知識、技術が十分にあるとされている。また、経済的な面でも原子力発電はロシアにとってなくてはならないと訴えるロシア人の専門家は多い。

当然、チェルノブイリの事故の経験で二度とこのようなことが起きないための対策は旧ソ連圏すべてが意識していることであるが、閉鎖を考えるのではなく、発電所の安全性やノウハウ、スタッフ教育システム等を改善しアップグレードさせる傾向のほうが強い。

5年前の東日本大震災の影響で一時期原発を考え直す流れもあり、専門家によっては閉鎖、少なくとも今後の増加は控えるよう訴えた者もおり、一部の国民はそれを望んでいる。しかしロシアの電力発電所は地震等の災害がほとんどなく、海からも遠い場所にあり、また技術も最新のものを使用しているため、その必要性はないと言うのが一般的な考えだ。

【韓国】韓国は原発大国へ

(現地在住ライター キム・ヒョンジ

韓国は、化石燃料資源に乏しく、大部分を輸入に依存している。現在、輸入燃料による火力発電が65%を占める。その為、自給率の向上を目指し、原子力発電を推進しているのだ。現在、原子力発電所は、25基が稼働中で3基が建設中。そして、2基の建設承認がなされている。すでに原子力発電比率は31%に達しているが、2030年までに59%まで拡大する計画だ。そして、申し訳程度だが、再生可能エネルギー発電も、11%に拡大する計画だ。

この計画は、東日本大震災以前のものだが、福島原発事故後も変更は無いのだ。韓国の原子力発電技術は、日本のものより安全で、地震の少ない韓国では、福島と同様の事故は起きないと言うのだ。そして、国民の大半も、日本の震災や福島原発事故は対岸の火事のように考えている。

とは言っても、福島原発事故は、韓国でも自国の原発は安全なんだろうかと言う議論のきっかけとなった。原発の有る地域では、反対運動も起こっている。特に韓国第2の都市釜山周辺には、10基の原発が有り、反対運動が盛んだ。地元選出の国会議員で反対運動に参加している議員もいる。しかし、反対運動は規模が小さく力も弱いのが実情だ。

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ロシアも韓国も原発廃止どころか原発輸出を狙っている

(HowTravel編集部)

現地ライターのリポートにあるように、ロシア、韓国両国では反原発の流れは主流でないことが伺える。国政や都政の有力候補者が反原発を公約に打ち出す日本とは対照的だ。チェルノブイリ原発事故を経験しているロシアと、福島第一原発事故後から東北・関東8県からの海産物輸入を未だに停止する等、原発事故の影響に過敏な韓国にしてはやや意外に感じられる。

要点をまとめると、ロシア、韓国で国内で原発廃止論が大きくならない理由としては、①原発技術に相当な自信がある、②自国では日本のような災害は起きないと考えられている、の2点のようだ。

目を外に向けると別の理由からも原発廃止論を唱えにくい環境にあることがわかる。というのも、ロシアはも韓国も海外に原発を積極的に輸出しているのだ。ロシアはトルコ、インド、ベトナム等で原発輸出を受注しており、東日本大地震直後の2011年3月15日にはプーチン大統領がベラルーシでの原発開発の調印式に出席した。また、韓国は2010年からUAEに原発輸出を始めており、ロシアも韓国もまだまだこれから原発を海外で売っていこうという矢先の福島第一原発事故だったのだ。

本当にロシアと韓国の原発技術が高いかはさておき、福島第一原発事故を反面教師として、両国やその輸出先国で悲惨な事故が起きないように徹底した対策が望まれる。