日本の映画・音楽・漫画・アニメ・ドラマ・ゲームといった文化を世界に押し出す施策として、日本政府が推し進める「クールジャパン戦略」がある。あまり知名度はないが、安倍内閣には、クールジャパン戦略担当大臣(兼務)という役職も用意されている。

そんなクールジャパン戦略の中で重要な標語となっているのが「Kawaii」だ。実は英語の「cute」は基本的に子供などの未成熟な相手や物に使われることが多く、日本語の「かわいい」のように多方面的には使いづらいといわれる。「Kawaii」はもはや世界共通語になっているといったニュースを聞いたことがある人も多いのではないだろうか。

「Kawaii」の他にも、ノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイがスピーチで用いたことで知られる「Mottainai」や、東京オリンピック誘致の際に多様された「Omotenasshi」など、外国語には適切な訳がなく、日本語がそのまま海外でも使われているとされる有名な言葉はいくつかある。

実際のところ、これらの言葉はどの程度海外で認知され、使われているのだろうか。海外在住者がリポートする。

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【台湾】もはや台湾語と受け止められている日本語も

(現地在住ライター 山田純

「“あなた”の仕事は何ですか。」台湾人に質問されて、なぜか話がかみ合わない、と言うことが多々あった。ドラマの影響なのだろう、(妻が夫に呼びかける)「あなた」を「夫」の意味だと勘違いしている台湾人が多く、説明するのに苦労した経験がある。このようにニュアンスを間違えて覚えていることもあるが、台湾人は意外と多くの日本語を知っている。

もちろん「Kawaii(かわいい)」は知っているし、「Oishii(美味しい)」と同様に宣伝文句に使われることもしばしばある。ただ「Omotenashi」や「Mottainai」に関して言えば、ほとんどの台湾人が知らないようだった。おもてなしの心やもったいないという気持ちは少なからず台湾人にもあるため、既に中国語に翻訳されて紹介されているから、というのが理由のようである。

いつまで夏が続くのだ、と暑さにうんざりの毎日だったが、そんな台湾にもやっと「おでん」が美味しい季節がやってきた。「ビール」を飲みながら短い秋を楽しみたいものだ。ちなみに「おでん」も「ビール」も日本統治時代から残る台湾語だ。秋の夜長に台湾語に今も残る日本語を探してみるのも面白い。

【台湾】韓国はかなり日本語が浸透している

(現地在住ライター キムハナ

日本の隣国である韓国。昔、日本に統治されていたという歴史もあり、知られている日本語が多い。

「Kawaii」はかなり知られている日本語の単語の中のひとつだ。韓国に旅行に来た日本人女性がかわいいものを見ると「かわいい〜!」と言っているのもよく聞くし、日本のアニメなどが普及しているからだろうと思われる。逆に世界でもよく知られている日本語として「Mottainai」や「Omotenashi」などがあるが、これは興味ある人だけが知っているという程度で、日常使っているのを聞いたことはない。

しかし、それ以上に韓国でよく使われている日本語は数多く、特に釜山などの南側地域では「いっぱい」「たまねぎ」「おでん」などの単語が日常的に使われている。知り合いに至っては、これらの単語は日本語ではなくただの方言だと思っていたらしい。

韓国は世界的にも一番日本語が浸透している国と言っても過言ではないと思う。

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【フランス】「Kawaii」より実際に使われている日本語がある

(現地在住ライター 竹内真里

「Kawaii」は確かによく知られているが、言葉としてそのまま現地人に使われているかというと疑問が残る。筆者が接する人々(主に30代以上70代以下)との会話中に「Kawaii」はまだ聞いたことがなく、かわいらしい子どもや物を目にした時はフランス語で同等の言葉を使っている。もしかしたら日本のアニメや漫画のファン、若い世代では使っているのかもしれないが、まだ耳にしたことはない。

「Omotenashi」「Mottainai」はそこまで周知されていない様子だ。これらの言葉をニュース記事などで使っていても、後に必ず続いて日本特有の礼儀正しさやホスピタリティ、特にサービス業における接客レベルの高さを表す言葉、無駄にしない、という説明がされている。この2つの言葉を友人らに言ってもポカンとした表情で「なんか聞いたことがあるような気がするけれど、どんな意味かは知らない」との答えだった。

ではどんな日本語が実際に現地語同様に使われているか。「Zen」は静かで穏やかな様子を表すのに、日常会話でも非常によく使われている。「Tsunami」もニュースや新聞だけでなく元老院のサイトなどでも使用されている。そして「Kamikaze」。テロが起こった時の報道で何度も見聞きするのだが、(自爆)テロリスト=Kamikazeと認識され使用されている。手持ちの仏仏辞典を引いてみたところ、戦時中の日本の特攻隊と訳されており、神の守りによって起こる風という解説はなかった。