浅田真央選手や、高橋大輔選手、織田信成選手等のスターを数多く抱えるフィギュアスケートは、国民の関心という意味で日本で最も人気のあるスポーツの一つだ。実際、「世界フィギュアスケート選手権2016」の平均視聴率は16・3%に達し、先日のサッカーワールドカップ予選の日本対オーストラリア戦の16.7%と肉薄する。特に、羽生結弦選手の映像が流れた際には最高瞬間視聴率25・1%を記録した。

日本では熱狂的なファンを多く抱えるフィギュアスケートだが、大会上位選手の出身国をみていると日本、韓国、ロシア、アメリカ、カナダなどがほぼ独占している。強豪国以外ではフィギュアスケートはどの程度人気があるのだろうか。また、日本を代表するフィギュアスケート選手である羽生結弦選手や浅田真央選手の知名度はあるのだろうか。海外在住ライターがリポートする。

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目次

フィギュアスケートがあまり人気ではない国

【フランス】マイナースポーツ感あり。選手の知名度も高くない

(現地在住ライター 竹内真里

この記事を執筆するにあたり、国際ファンサイトもある浅田真央選手や羽生結弦選手を知っているか周囲に聞いてみたが、誰も知らなかった。その理由を考えると、

・自身の関心がない事柄なので知らない
・日本ではその日に起こった事件や事故、政治経済、芸能、スポーツの戦績、天気予報などひととおりの情報がニュース番組内で報道されるのでテレビをつけておけば自然と耳にするが、フランスではスポーツについて触れられる種目はサッカー、ごくたまにテニスぐらいである
・ネットや新聞などのスポーツ欄に目を通していても、その選手のファンでなければ覚えない

といったところか。

さて、去る11月11日から11月13日、フランスのパリでフィギュアスケートグランプリシリーズ、フランス杯が開催され、筆者もフリースケーティングの試合を観戦した。会場は半分ほどしか埋まっておらず、日本の開催時より寂しい雰囲気だが、横断幕や各国旗を振り応援するファンの姿が見られた。

ちょうど後ろに熱心なフィギュアスケートファンとみられるフランス人の2グループ(中学生の女子5人組と40代とおぼしき女性4人組)がいたので、この人たちなら日本の選手を知っているかもしれないと思い話しかけてみた。結果、40代らしき女性グループは浅田真央選手を知っていたが、羽生結弦選手は知らず、中学生グループはどの日本選手も知らなかった。「浅田真央選手と無良崇人選手は今日出場しているんだけど、聞いたことないですか?」と言うと5人揃って「知らない」。自国の選手が登場するたびに熱い声援を送っていた彼女らだが、応援の対象以外はほぼ知らないとのことだった。

観戦したのはたった1日のみだが、会場の客入りを見てもフィギュアスケートはそこまで人気があるとは感じられなかった。フランスの選手も男女出場していたが、開催地のわりには観戦者が少なく、日本や他国の応援の方が目立っていたように思う。スポンサーも日本の企業名が多かった。

【イギリス】スケートと言えばアイスホッケーというの認識

(現地在住ライター バックリー佳菜子

筆者の住むイギリスではフィギュアスケートをはじめウィンタースポーツ自体の知名度が低い国である。そのため夏季オリンピックに比べ、冬季オリンピックの扱いもかなりぞんざいだった。これにはイギリスで人気のあるサッカーやラグビーが冬のスポーツであるというのが影響している。例えばプレミアリーグは夏から翌年の春にかけて開催され、この時期はウィンタースポーツに目が向かないのだ。

そんなイギリスでは冬になるとスケートリンクでアイススケート自体を楽しむ人は多いのだが、スケートというとアイスホッケーの印象が強くフィギュアスケート自体を見たことがない人も多い。

そんなイギリスではやはり各日本人選手の知名度も低く、浅田選手や羽生選手の名前を知っている人かなり少数になるであろう。しかし日本が有名なフィギュアスケーターを多数輩出していることはある程度知られており、オリンピックなど国際的な機会ではよく日本のフィギュア人気にふれ、報道されている。

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フィギュアスケートが人気の国

【アメリカ】シーズンになれば必ず話題にのぼる日本人選手の活躍

(現地在住ライター 長谷川サツキ

スポーツはバスケットやホッケーといった国内試合ばかりが盛り上がるアメリカだが、フィギュアスケートに関しては例外といえるだろう。華やかなフィギュアスケートは、シーズンになると国内外の試合の放映を楽しみにしている人が少なくない。そして「エレガント」と評される日本の羽生結弦選手や浅田真央選手は、海外選手でありながらアメリカでもその知名度はかなり高い。

ただしアメリカでの選手たちの人気ぶりは日本とは少し異なり、選手のルックスやキャラクターにはさほど注目していないようだ。羽生選手はアジア圏ではファンクラブがあったりともはやアイドル的な扱いだが、アメリカではあくまでもアスリートとしての知名度にとどまる。そのためアジア程の熱狂的な人気はないものの、日本のトップ選手達の演技はいつも話題やニュースにのぼる。彼らの洗練された演技はアメリカでもとても評価が高いのだ。

【ロシア】羽生結弦の知名度はフィギュア好きのロシアでも高い

(現地在住ライター チェルカーソワ・ユーリヤ

フィギュアスケート大国、ロシアではフィギュアは国民的なスポーツであり、オリンピックなどの大きなイベントともなれば、みんなが注目する一大事である。また多国民国家であるためか、海外の選手の能力もしっかり認められ、話題にされている。

羽生結弦のパフォーマンスは日本どころかアジアにすらまったく関心のない、純粋なフィギュア・ファンにとても高い評価を受けている。逆に何か日本の話題のなると、「日本と言えば…」のつながりで羽生結弦や浅田真央の話題が出てくることもしばしばある。

特に40代から60代の元ソ連人はスポーツに関心が高く、ロシア人選手のサポートももちろんだが、「これからは日本の選手から目が離せないね」という人も少なくない。ちなみにフィギュア・ファンの年齢層は本当に様々だが25歳より上が多い傾向がある。しかし羽生結弦に関して言えばロシアのソーシャルネットワークなどでも話題になるため、年齢層の垣根を越えて本当にいろいろな人に注目されていることが分かる。