先進国を中心に139カ国もの国が、死刑制度を廃止・執行停止している。日本でもたびたび死刑廃止の議論が起こるが、遺族感情などが問題となり実現には至っていない。遺族感情は、非常に共感を得やすいものであり、死刑廃止は容易ではない。死刑を廃止している国でも凄惨な事件が起きることもあるが、その際に死刑制度の再導入に関しての議論にはならないのだろうか。既に死刑は選択肢から外され、その先の議論になっているのだろうか。海外在住ライターが各国の死刑制度についてリポートする。

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【アメリカ】廃止と適用が交錯する国 全体の流れとしては廃止の方向へ

(現地在住ライター 長谷川サツキ

各州が準国家とも呼べる権力を有するアメリカでは、死刑制度の有無も州ごとに異なる。「先進国で死刑制度を廃止していないのは日本とアメリカだけ」とよく言われるが、初めて州が死刑が廃止したのは1847年のことで、意外にもヨーロッパよりも100年以上早い。それ以来徐々に増えていき、2016年現在では廃止した州の数は20となった。

一方カリフォルニアやニューヨークを含む31州およびアメリカ連邦政府、軍隊では今も死刑制度がある。しかしDNA鑑定導入によって過去の死刑囚の冤罪が多数発覚したり、再審で判定が覆ったりする現状を踏まえ、死刑制度が現存していても長らく死刑制度を適用していない州も多い。死刑制度の問題は現在でも活発に議論されつつも、流れとしては死刑廃止の方向へ進んでいるといえるだろう。

【コートジボワール】死刑は廃止されど…

(現地在住ライター Sanogo Miyu

コートジボワールでは2000年に憲法上では死刑は廃止されていたのだが、刑法上での規定がなく事実上の死刑廃止とはならず、昨年やっと刑法上でも死刑が廃止された。

しかし、犯罪の絶えない最大都市アビジャンの刑務所は受刑者で溢れており、脱獄する者も多い。死刑廃止により無期懲役の受刑者の中には看守を買収し刑務所内から麻薬販売などで生計を立て、まるで我が家のように優雅な暮らしをする強者もいる。そんな受刑者もつい先日刑務所内で射殺された。

死刑こそないが町中で犯罪者を見つければ治安部隊は躊躇なく射殺、住民達はリンチして殺す、撲殺やガソリンをかけて火を点けるなどし、警察に頼らず住民自らが制裁する、こんな事は日常茶飯事なのだ。特に証拠もないまま呆気なく殺してしまう。然るべき法的措置のもと死刑判決が下る事と、証拠や供述もないまま、ましてや住民の手で処刑される事、どちらも犯罪者は死をもって償うべきだという考えなのではないだろうか。

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【ブラジル】支持される死刑導入

(現地在住ライター 増成かおり

1876年に最後の死刑執行が行われて以降ブラジルでは死刑は行われていない。また、1889年にブラジルの法制度から死刑は削除され、現在のブラジルには死刑はない。死刑制度がなかったり、人工妊娠中絶が例外をのぞいて認められないのは、ブラジルが多数の信者を抱えるカトリックの影響だ。

しかし、それは現在のブラジル国民の心情を反映しているとは言えない。治安が悪化の一途を辿り続ける中、多くの国民の間でより重い罰則を望む声が高まっていて、半数の人が終身刑の導入を支持し、死刑を望む人もそれに匹敵していることが調査で分かっている。この国には終身刑もない。

人々は、強盗や殺人など犯罪に怯える毎日に疲れきっている。私自身、何度か犯罪の被害に遭っていて、つい先日も強盗に襲われかけた。死刑を望む声は、穏やかな日々を望む国民の切実な声なのだ。

死刑制度を持つ国は少数というのは本当なのか

(HowTravel編集部)

先進国で死刑制度を持つ国はアメリカと日本だけであるという話を耳にしたことがある人も多いだろう。何をもって先進国と呼ぶかは議論があるが、一般的に先進国の線引きとして使われるOECD加盟国の中で死刑制度を持つのは日本、アメリカ、韓国のみである。また、韓国も死刑執行を20年近く停止しており、アメリカも17州で死刑が廃止されている。先進国の中で死刑制度を持つ日本は特異というのは間違いないだろう。

国際人権団体であるアムネスティ・インターナショナルによると、世界全体でみた場合、死刑廃止国・執行停止国の合計は139カ国、残置国は58カ国となっている。先進国か否かに関わらず、死刑制度を維持している国が少数派であることがわかる。

一方で、中国、インド、インドネシア、アメリカ、日本等の人口が多い国で死刑制度があるため、人口規模単位みた場合は死刑制度維持は50%以上の多数派となっている。

まとめとしては、先進国で死刑制度を持つ国はほとんど無く、国単位でみた場合も少数派だが、世界中の過半数の人々は死刑制度を持つ国で暮らしているということになる。