2016年発表の内閣府調査によると、中国に「親しみを感じない」と答えた人が過去最高の83・2%となった。日本人の対中国感情は悪化の一途を辿っており、それを煽るように中国の日本に対する反日行為が連日報道されている。近年増えている報道の中で、中国の周辺国からの孤立と、中国とロシアの親密化がある。日本人からすると、旧共産主義国であるロシアと中国は西側諸国から一定の距離を置いているイメージがあるだけでなく、日本が双方と領土問題を抱えていることもあり、脅威を感じる二国という側面もあって、一括りにされる傾向がある。実際、両国は共同軍事演習を重ねる等、共通の利害の下、協力関係にあるように見える。だがこれはあくまでも第三国からの視点であり、実際のところ、お互いの国民は相手の国をどう思っているのだろうか。現地の反応を、中国、ロシア双方在住のHowTravelライターがリポートする。

※この記事の内容は現地在住者自身の経験と知見に基づくものであり、HowTravelの主張を代弁するものではありません

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目次

政府と現地民の感覚には差が

(現地在住ライター 高橋亮

以前中国の黒竜江省に旅行したことがあったが、ロシアと隣接しているだけありロシア語で書かれた看板や、ロシア人を多く見かけた。やはりロシアに関しては親しみを持っている人も多いというのが東北地方に滞在してみての感想である。

しかし東北地方以外でのロシア人の印象はというと、そこまで親しみのこもったものではないというのも事実である。ロシア人というと「太っている」「若い女性は美しい」というような印象しかなく、とくに好感や反感を持っているというわけではないのが一般的な中国人の見方のようだ。

ロシア政府についても、一部の熱烈な愛国主義者を除くとそこまで関心はなく、同志という印象も薄いのが事実だ。中国のニュースなどの報道においてはプーチン大統領についても取り上げられることがあるが、プーチン大統領についても「すごい人」という以外特別な感情がないのが一般市民の感情である。

中国人の日本や韓国といった国に対する興味や感情に比べると、ロシアやロシア人に向けられる感情などは非常に薄いというのが現地での見方だといっても過言ではないであろう。ちなみに筆者も中国人の友人にロシアについての感情を聞いてみたところ「貧しい」「寒い」といった消極的な見方しか聞くことができなかった。

共産党仲間であり、いまはよきビジネスパートナー

(現地在住ライター チェルカーソワ・ユーリヤ

もともとロシアと中国は共産党の歴史もあり、比較的互いに良いイメージを持っていた。これはソ連時代、学校教育やメディアなどで多く中国との関係が取り上げられていたためである。しかし、ソ連開放後は「人が多くて、みんな貧乏で、質の悪い安いものを生産する」というイメージが高まってきた。ただ、決して嫌う気持ちはなく、少し上から目線で中国を思う時期があった。

しかし、現在の中国の発展、生産品質の向上、また多くの中国人留学生がロシアを訪れていることもあり、そのようなマイナスイメージはなくなった。今は中国や中国人に対して、尊敬できるビジネスパートナーというように思うロシア人がほとんどである。それを裏付けるかのように、ロシアの教育施設では中国語が大人気で、学校によっては小学校一年生から中国語を習わせているところもある。

そしてルーブル安の影響とヨーロッパでのテロの連続で気軽に観光できる外国としてトップ3に挙げられるのが中国なのである。中国側もまた、ロシア人観光客のためのロシア語表示や多くのロシア語が話せるガイドを用意しているため、より行きやすい国となっている。そして、ロシアもまた共産党の歴史関連観光スポットや中国語で書かれたガイドブックなど中国人観光客を引き付ける多くの活動を行っている。

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国民間では戦略的パートナーという意識は薄い模様

(HowTravel編集部)

日本国内で反中感情が高まる中、中露の経済・軍事交流についてのニュースがしきりに報道されていることもあり、両国は親密であるという印象がある日本人は多いかもしれない。だが中国・ロシア両国からのリポートによると、国民レベルでは特別お互いの国を意識しているということはないようだ。