イスラム教徒が豚肉を食べてはいけないのは有名な話だが、牛肉や鶏肉等においても、イスラム教徒が屠殺したものでなくてはならなかったり、餌にハラール(イスラム法で許されたもの)以外を用いてはならなかったり等、戒律が厳しい。その他にもイスラム教徒は様々な宗教の中でも口にできないものが多いが、日本では対策があまり進んでおらず、東京オリンピックを見据えた外国人旅行者急増を前に、対応が急がれている。日本でこれまで対策が進んでこなかった一因としては、そもそも日本にはイスラム教徒が少ないことが挙げられるが、イスラム教徒の数が多い海外ではハラールの整備が進んでいるのか。

スポンサーリンク

目次

【インド】インドではハラールフードは一般的

(現地在住ライター アジュナンナオミ

インド国内のイスラム教徒は15%ほどだと言われている。他にもシーク教、仏教、ジャイナ教とさまざまな少数派宗教徒が存在する。

大きな都市には比較的大きなモスクがあり、その周辺にはアラビア語で書かれたレストランがたくさん並んでいて、いつも賑わっている。ローカルの鶏肉ショップでは入口に「ハラール カット」と書かれていて、よくイスラム教徒の人たちが買いに来ているし、モスクの周りには牛肉を吊るして販売しているところもある。インドの人口に対しての15%は日本国民より多いので、ハラールフードへの認識が定着しているのは当たり前かも知れない。しかも多数派のヒンズー教徒にもベジタリアンが多い国なので、食肉の問題なく食事ができるレストランも多い。

田舎で鶏肉を買う際「血抜き」をしてあるお店としていないお店があったのだが、まさにハラールフードとして売られていたと言う事だろう(※ハラールフードは血抜きが必須)。ハラールフードは条件が厳しいが我々日本人が安全に食べれる目安としては海外では役に立つ食材だと言える。

【イギリス】世代を超えて身近な存在

(現地在住ライター バックリー佳菜子

筆者の住むイギリス イングランドでは2011年のデータで全人口の5%、約270万人がイスラム教徒である。そのため、一般のどのスーパーでもハラルフードコーナーが作られているほどで、ムスリム人口の多い地域のスーパーへ行くと生肉食品コーナーの5分の1がハラルミートが占めているほどである。

また、レストランでのメニューを見ても、ベジタリアン向けメニューのマークとハラルフードメニューのマークが付いているメニューもよく見かける。そういった意味では日常生活にかなり浸透していると言えるだろう。筆者の友人の話では、学校の食堂メニューでもムスリムの学生向けにハラルメニューを提供することが増えてきているとのことであり、世代を問わず身近な存在となっている。

スポンサーリンク

【フランス】簡単に一般のスーパーで入手可能なハラールフード

(現地在住ライター 竹内真里

フランスではイスラム教徒が多く住んでいる。パリではスーパーに行けばハラールフードコーナーが設けられているし、個人経営のサンドイッチ屋、ケバブ屋、肉屋などでも店によっては「ハラール扱い有り」と看板に出ており、手に入りやすいようだ。

筆者が通訳を務める移民向けの終日講座に来る人々の国籍はさまざまなのだが、無料提供の昼食はインド料理店でカレーとなっている。チキン、ビーフ、ベジタブルの3種類から選べるが、たいてい「それはハラールですか?」と質問がある。多くの場合イスラム教徒はベジタブルカレーを選択するか、敬虔な信者はどこかよそで食事を済ませてくる。

また、9月に新学期が始まり学校関係の書類の記入をしたところなのだが、給食について「あなたの子どもは豚肉を食べますか?」という項目があり、いかにも異なる宗教を信仰する人々が集まる国らしいなと思った。

しかしイスラム教徒の知人を見ていると、豚肉は食べないけれど他はなんでも食べる人、ハラールフードにこだわっていない人などずいぶんと差があり、各自信仰の度合いによるようだ。