日本では台湾が親日的であるという報道ばかりされるが、歴史的背景から考えて、本当に親日一色なのか。例えば日本でも大多数は親米的である一方で、反米的な層も存在する。統治してくれと頼んできたわけではない台湾を約50年間に渡って統治したのだから、反日的な思考を持つ台湾人がいても不思議ではない。この記事では、日本が好きで日本に留学していた経験もある親日台湾人ライターが、台湾では少数派である、日本が嫌いな台湾人の主な主張を説明する。それら主張は事実関係を争っている部分もあり、必ずしも台湾人の総意ではなく、この記事も「台湾人は実は反日だった」ということを明らかにすることが目的ではない。そもそも台湾人のほとんどは間違いなく親日的だ。ただ、日本では、台湾人は親日的だという一方向の報道があまりに多いため、あえて逆の意見を台湾現地在住者に聞いてみた。

※この記事の内容はHowTravelの主義主張を代弁するものではありません

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大多数が親日の台湾人の中で、日本が嫌いな台湾人って?

(現地在住ライター 紀伊

日本に約50年間統治されてきた台湾は戦後ようやく独立した。但し、ここで待っていたのは更なる不公平な待遇と白い恐怖(国民党政府による反政府組織の弾圧)だった。大人数の冤罪から生じた祖国に対する失望は、より安定した社会を創ってくれた日本への追懐に転移した。また、抗日を率いた左派の台湾人はほぼ白い恐怖期間で殺害されたり、他国に追い出されたたりしたため、日本時代の植民問題を考え直せる台湾人は台湾に殆ど残っていなかった。それが原因で、韓国や中国のような反日感情を、台湾人では持っている人が少ないのだろう。

新台湾国策智庫の調査によると、48.2%の台湾人が日本好きで、日本嫌いな台湾人は僅か10.8%しかいない。この10.8%の日本が嫌いな人は歴史、経済と政治を問題視している。

まずは、歴史問題。1896年6月10日、台湾雲林で発生した無差別虐殺事件「雲林虐殺事件」で抗日者のほか、女性と子供も殺害され、約1万名の死者が出た。1930年10月27日台中州能高郡霧社で発生した「霧社事件」の最中、日本軍隊は大砲や機関銃のほか、1925年ジュネーヴ議定書(Geneva Protocol)で禁止した毒性ガスも用い、無差別鎮圧を行った。無差別事件で家族を失った遺族の恨みを消すことは容易ではない。
 
また、経済と政治的な理由で反日する人も少なくはない。最も有名なのはうおつり島(台湾で「釣魚台」という)の領有権である。うおつり島は古来から台湾宜蘭の経済水域であるとの主張が国内であり、台湾人漁師がよくここで活動していたと言われている。反日感情を持つ台湾人の認識はこうだ、「1970年代、アメリカが沖縄を日本に返還し、国連の海洋調査で油田の存在を発見後、日本を含む各国のうおつり島の領有権を主張し始まった。日本はうおつり島が沖縄の一部としてアメリカから返還された島だと主張し、台湾人が経済水域での活動を拒否している」。2012年9月23日に宜蘭の漁師による起こした「うおつり島保護行動」は近年最も大規模な事件であった。領有権の事実関係の議論はありつつも、元々持っていた経済権が奪われた人間はどうやって日本のことを好きになれるのか?
 
最後、まとめて言うと、台湾は小さな海島であるが、オランダ、スペイン、中国、日本に統治されたことにより、寛容な国民を育成した。それに、複数民族から構成した国家の包容力は単一民族国家より大きいとよく言われ、日本人のほか、どの国籍の人間であっても、台湾で台湾人の優しさを感じられると思う。