2016年6月23日に実施されたイギリス国民投票のイギリスのEU離脱が決まったが、その後、東欧や中東系移民に対する嫌がらせが多数発生していることは日本でも伝えらえている(イギリスEU離脱決定による旅行者への影響記事はこちら)。イギリスを旅行する際や、留学・転勤等でイギリスに住む際、人種差別のあるなしというのは気になる問題だ。旅行者から聞く人種差別エピソードは、単に文化的な違いでそっけないだけだったり、言葉がうまく伝わらなかっただけの勘違いということもあり、正直参考にならないことが多い。そこで、イギリスに長年住む現地在住ライターが、イギリスの人種差別事情をリポートする。

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日常に潜む人種差別

(現地在住ライター 竹内奈緒美

渡英後に筆者が人種差別を受けたのは、出産後、助産婦が産後サポートのため訪問してきた時だった。体調がやや悪かった私に初対面の助産婦が「バナナみたいに黄色い肌」と言ったあの風景を、10年以上経った今でもはっきりと覚えている。怒りや悲しみという感情は湧いてこなかったが、はっきりと失礼なことを言われた衝撃で、何も言い返すことができなかった。

このようなあからさまな人種差別以外にも、日常的に小さな人種差別は存在している。例えば、イギリスでもスーパーのレジで、先客が立ち去る前に次の接客を始めるのは失礼だとされているのだが、某大手スーパーのレジで、私がまだ荷物を袋に詰めているにもかかわらず、次の接客を始められたことが何度かある。また、ファストフード店で注文をすると先程までとは違う不躾な態度で接客されたりもした。これらの件に共通するのは、「白人ではない人々が小さな人種差別をしてくる」という点だった。

予め断っておくが、筆者はレイシストではない。外国や白人に対する羨望もないし、人種や出生による差別には強い憤りを感じる。しかし当然ながら、例えこちらがそうであっても、周囲の人々も同じだとは限らない。ひと目見てレイシストだと判断できればいいのだが、イギリス人は日本人と同じく、本音を外に出さない傾向があるため、見た目での判断はなかなか難しい。

歴史的に根深い人種差別をすぐに無くすことは非常に困難だ。よって、海外へ留学や旅行に行く日本人は、自分が人種差別を受ける可能性があることを肝に銘じ、その時どう対応するのか事前に考えておくと、動揺も少なくその場を乗りきれるだろう。忘れてはならないのは「人種差別をしてくるのは、ごく一部の人々なのだ」ということだ。私も自分の実体験を踏まえて「白人ではない人々」を避けようかと考えたこともあったが、それは結局自分の行動を狭めることに繋がると気づき、これまでどおりに過ごすことにした。「人種差別?上等だ!」くらいの精神力はまだないが、日本人としてのプライドを胸に、自分の可能性を狭めることなく暮らしていきたいと思っている。

差別があることを認識した上で海外旅行を

(HowTravel編集部)

程度の差はあるとはいえ、人種差別は日本を含めてどこの国でもあるため、いちいち目くじらを立てていてはせっかくの海外旅行が楽しめなくなってしまう。人種差別を受けるというのは誰にとってもショックな出来事ではあるが、現地在住ライターからのリポートにもあるように事前にどのような差別を受ける可能性があるのかを認識しておけば、旅行中に嫌な思いをすることは少なくなるはずだ。そもそも差別は文化的な違いから生じる側面が強く、それすらも文化体験の一つと思えるくらいの心の余裕を持っておければ海外旅行が一層楽しくなるだろう。