7月26日に厚生労働省が発表した2015年度の「雇用均等等基本調査」によると、男性の育児休暇取得率は前年から0.35%増え、2.65%となった。1996年の調査開始以来最高の数値となっており、日本国内の報道では、進む男性の育休が盛んに報じられている。海外における男性の育休取得はどのような状況なのだろう。国内報道でもやたらと欧米では育児への男性参画が一般的であると喧伝されており、男性の育休取得も容易であるとのイメージがあるかもしれない。最近では第一子が誕生したイギリスのウイリアム王子が、空軍のパイロットの仕事で2週間の育児休暇を取得したニュースが報道されている。そこで、男性の育児休暇取得の現状を、イギリス現地在住HowTravelライターがリポートする。

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安心して子供が産める制度を目指すイギリス

(現地在住ライター バックリー佳菜子

筆者の住むイギリスでは2015年4月から、1年間の育休期間を母親と父親で好きなように配分できるようになった。そのため筆者が昨年8月に長女を出産した際、夫は産後直後に5週間の育休を取得し、さらに4か月後に3週間育休を取って家族で日本へ帰省した。

筆者のケースでは、父親は産後2週間の必須育休と6週間の共同育休を取った形になる。そのため母親は1年間の育休から6週間を引いた時点で育休が終了する。これは育休中に企業が育休を取得している社員へ支払う金額は企業によって違うため、母親の育休条件と父親の育休条件を比べ、より多くの利益があるほうが取得するというのが一般的なためだ。

また母親・父親ともに育休を取っている間に減給や役職の変更などは許されておらず、出産前に父親が育児や出産について学ぶ父親学級に参加するため仕事を休む場合も、通常勤務日扱いとなる等イギリスの男性育休制度は、より安心して子供を産める社会を作ろうとするイギリスの制度の一つであるといえるかもしれない。

筆者の夫がトータル8週間の育児休暇を取得した際、休暇を取る前に至急のプロジェクトなどはあらかじめ他のマネージャーに引継ぎ、プロジェクトをまとめてもらったが、そのマネージャーが2週間のホリデーを取得する際には夫が代わりに引継ぐなど実務では混乱もなかった。

また長女をオフィスに連れていき、一緒にランチを食べるなどしてプロジェクトチームのメンバーにも育児中であることアピールすることで職場での感情面のケアもしやすく、父親が育児休暇を取得することの弊害はほぼないため、取得しやすい面もあるだろう。

制度よりも文化の違いが大きいか

(HowTravel編集部)

現地ライターのリポートによると、イギリスでは父親でも比較的育休を取りやすいようだ。実際、イギリスにおける父親の育休取得率は12%を超えており、日本に比べると10%程度高い。

だが日本においても、子供が満一歳になるまでの間、父親が育児休暇を取得することは法律上可能だ。育休期間を父親と母親の間で配分できるようにする等、年々制度変更を重ねて取得しやすくはしているが、今のところ取得できる期間に差はない。

また、育児休暇期間中の給与についても、育児休暇取得開始から6週まではイギリスの方が有利な一方で、6週目以降は日本の方が貰える額が多くなる可能性が高い。
■日本の育児休業給付金
・育児休業開始から180日までは自身の日額賃金×支給日数×67%
・育児休業開始から181日以降は自身の日額賃金×支給日数×50%

■イギリスの育児休暇期間中の給与(会社から支給)
・育児休業開始から6週は社員の平均所得の90%
・育児休業開始から6週目以降、39週目までは週139.58ポンド(1ポンド=約130円)か平均所得の90%の少ない方

制度面での大きな差はなく、結局なところ日本において父親の育児休暇が増えないのは、文化的な背景の影響が大きく働いているのかもしれない。先進国内で有給取得率最下位常連でもある日本では、理由があっても休みたいと言えない職場環境が常態化しており、職場復帰後の給与や役職に影響させない等の制度作りはもちろん、育児休暇を取得したいと言える雰囲気作りが重要なのではないだろうか。