ロシアの国家ぐるみのドーピング問題が発覚し、8月5日に開幕を控えるリオオリンピックへのロシア人選手出場に暗雲が立ち込めてきている。当初387人だったロシア選手団の内、7月31日時点で114人の参加禁止が発表される等、まだ決定を下していない競技団体も含めると、半数近い選手がオリンピックに参加できない可能性もある。ロシア国民はどのように捉えているのだろうか。現地の反応を、HowTravelロシア人現地ライターがリポートする。

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外国からのプレッシャーの中、ロシア代表は勝利を狙う

(現地在住ライター ティム・ペトホフ

2015年11月9日、スイスのジュネーブで開かれた記者会見でWADA(世界アンチドーピング機構)はロシアのアンチ・ドーピング規則違反を発表し、ロシアの陸上選手をリオオリンピックに出場させないよう、国際陸上競技連盟に推奨した。

当時、WADAの発表はロシア国内で大きな物議を醸し、ロシアのスポーツ相や様々なスポーツ団体の関係者はその容疑を否認して、WADAの情報を「根拠のないもの」と言い切った。個人的には、当初スポーツ相だけでなくロシア国民のほとんどは、ロシアの陸上選手が実際にオリンピックに参加できないとは夢にも思っていなかったように思う。

しかしWADAの発表の後、IAAFやIOC(国際オリンピック委員会)団体等からのロシアに対するプレッシャーは日に日に高まり、結局、ロシアの陸上選手はリオ五輪に出場できなくなってしまった。陸上選手のリオ五輪の不参加は国内メディアだけでなく、ロシアの社会にも大きな話題を巻き起こした。

7月下旬、国家社会調査研究センターは「ロシアのドーピングスキャンダル」をテーマにした調査を行なった。この調査の結果によると、回答者の半分以上(55%)はWADAが公開した情報をほとんど信じていないし、ロシアの「ドーピングスキャンダル」の原因は完全に政治的な理由であると考えている。そして、多くの回答者(31%)は、ロシアの陸上選手に対するオリンピック参加禁止の決定は不公平だと考えている。一般国民のほとんどは国際スポーツ団体のロシアへの対応に異議があるということだ。「禁止薬物を使用しているのはロシアのスポーツ選手だけでないが、参加を禁止されたのはロシアの陸上選手だけだ」と言う意見が多い。

ちなみに、WADAの立場を支持している国民も少なくない。彼らの意見では、批判されるべきなのはスポーツ選手ではなく、スポーツ省の役員であるとのことだ。また、「ドーピングスキャンダル」のきっかけに、スポーツ省が改革され、国内のドーピング規則を強化すべきだという意見を持っている人々もいる。

この問題に対して社会の中にさまざまな意見があるが、半数以上の選手が参加できる見込みである今、国民の多数はリオオリンピックに参加するスポーツ選手を応援しており、外国からのプレッシャーを跳ね返して多くのメダルを獲得することを期待している。