労働組合の中央組織・連合によると、日本では職場における8%がレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(以下、LGBT)のいずれかという調査があり、35%が同僚にLGBTがいると「嫌だ」と答えている。海外ではLGBTへの理解が進んでいるイメージがあるが、実際、周りの環境で自分がLGBTと公表している人はいるか。また、周りはLGBTにどのような反応を示しているか。同異性愛者や両性愛者への理解が進んでいるイメージが強い欧米の現地在住者がリポートする。

スポンサーリンク

目次

【アメリカ】大都市では広く理解されるも、全米規模ではない。

(現地在住ライター ミナミ・ヒューズ

私の住むシアトルは、全米でも最もリベラルな都市のひとつとして知られているのもあり、LGBTの人口が特に多いといわれる。周りにもLGBTを公言している人は多く、初対面の人でも話の流れで「私はゲイなんだけど」と言われることも少なくない。町を歩けばいたるところで同性同士のカップルが仲良さげに歩いているし、それに対して何かコメントをしたりリアクションをとる人もいない。個人の尊厳を尊重しようという雰囲気であり、他人が人の性自認をどうこう言うのはナンセンスなのだ。

とは言え、他の地域、特に厳格なキリスト教徒の多い南部ではこの限りではないようだ。2015年の6月にオバマ大統領政権下でアメリカ全州での同性婚が合法化されたが、結婚証明を申請に来たゲイのカップルの申請をキム・デイビスという厳格なキリスト教徒の窓口係が拒否し、訴訟騒ぎになるという事件も起きている。この夏フロリダで起きたゲイクラブを標的とした乱射事件も記憶に新しい。

国を挙げて性差別の撤廃を目指してはいるが、その道のりはまだまだ長いものであるようだ。

【イギリス】今後は精神的な成長が必要

(現地在住ライター 竹内奈緒美

2013年7月に「Civil Partnership」が成立してから、イギリスでは同性婚が合法となった。今日ではホテルのウェブサイトに同性カップルのウェディング画像を掲載するのが、アピールのひとつとなっているほどだ。これは、同性婚やLGBTがひとつの生き方・主義主張として一般的に受け入れられるようになった結果だと言える。

筆者の知り合いの娘さんは思春期に差し掛かった頃、自分の興味が男の子ではなく女の子に向いていることに気がついた。思い悩んだ挙句、母親にそのことを打ち明けると、母親は彼女の告白に驚き怒ったそうだ。娘さんからすると想定内の結果とはいえ、このことは彼女をひどく傷つけ落ち込ませた。「私らしく生きたい」という彼女の気持ちと、「苦労を強いられるであろう道から子供を守りたい」という母親の気持ちの両方が理解できたため、私は複雑な思いで話を聞いていた。

LGBTとしての生き方が社会的に認知されつつある一方で、その社会に属していても個人的にはLGBTを受け入れられない、という矛盾がその母親の話から垣間見えた。生理的に無理だったり、宗教観などが絡んだりするため、容易くはないだろうが、この矛盾を解消し「自分と違う相手を受け入れる」ことがごく自然なこととなるまで、イギリス社会はさらに成長していく必要があるだろう。